就職・転職
簿記の資格を持っていることが必ずしも会社の経理部門に就職することを保障しているわけではありません。ただ漠然と簿記の資格を生かした仕事をしたいと思っている場合には、就職先は無限と言って良いほどあります。就職するにあたって一番大事なことは、自分自身の目標がどこに向かっているのかを知っておくことです。
簿記検定の各級と就職効率の相関関係とは
簿記検定のそれぞれの級が、就職にあたってどの程度有効でしょうか。
まず日商と全経の4級ですが、これは残念ながらほとんど効果がありません。確実な効果をあげるためには、日商・全商・全経の3級以上を持っていることが最低条件になります。
逆に大きな効果のあるものは、間違いなく日商1級と全経上級です。この2つを取得していれば、大企業の就職においてもとても有利になるでしょう。
日商1級と同じ1級であっても、実は全商1級・全経1級は1ランク下に見られています(詳しくは、簿記検定試験のレベルの比較 をご覧ください)。しかし、日商1級や全経上級に準じるものとしての価値はきちんとあります。
日商2〜3級・全商2〜3級・全経2〜3級については、3級よりは2級であるほうが有利であるのは間違いありませんが、就職の現場ではほぼ同一視されており、資格の級よりは本人の資質が判定の基準となることが多いようです。
即戦力ではなく適正が問われる新卒者の就職
高校や大学からストレートで就職する場合は、簿記の資格はそれを助けてくれる頼もしい味方になってくれます。また、在学中に日商1級や全経上級を取得している人は非常にまれですから、それぞれ3級以上を持っていれば会社は触手を動かすはずです。
新卒者の場合には、採用者に即戦力としての簿記技能を求めているわけではありませんから、資格を持っていることを前提とした採用者の適性がより重視されます。
経験や上級の資格が求められる中途採用者
高校や大学からストレートで就職するのではなく、一般の人が簿記の資格を取ったことで仕事を始める場合は、少しだけ事情が変わってきます。
中途採用の場合は、経理担当者の募集広告に「経験○年以上」あるいは「簿記○級以上」と書いてあるものがずいぶんと多いのです。経験のない人や上級の資格を持っていない人にとってこれはなかなかの難関で、そのために就職戦線から離脱してしまう人もいるようです。中途採用者に対しては,資格を持っていることを前提とした即戦力が求められます。とにかくまず就職して経験を積むことが大切です。
企業が簿記検定取得者に求めている適性とは?
ハード面として求められているのは次の2点です。
第1に仕事が速いこと。モタモタと帳簿をつけていたのではあとからあとから仕事がどんどんたまってしまって、結局帳簿をおこなう意味がなくなってしまいます。
第2に仕事が正確であること。「数字が命」である経理が間違っていたのでは、時には数字が1ケタ違ってしまったために会社全体の歯車が狂ってしまうという一大事に発展することだってあります。
しかし、現代の経理マンに求められているのはそれだけではありません。ソフト面として求められているのは、経理を通じて会社の経営状態をキチンと把握しておくことです。質問された時に答えられないのでは困りますし、何がどういう理由でそうなっているのかがわからなければ経理マンとしては失格です。ベテランになれば、経営者からの相談を受けるようなケースも多くなってくると思いますし、銀行との交渉を受け持つようになれば社交性も要求されます。
始めは仕事を機械的にこなしていればそれで十分ですが、有能になればなるほどその業務内容が拡がっていくことを決して忘れないようにしましょう。
支給される傾向にある資格手当て
簿記検定合格者が就職した場合の収入と待遇についてですが、経理マンは簿記技術者として昔から認められており、いわゆる事務職のなかでは特別な扱いを受けてきました。統計がないのでハッキリとしたことは言えませんが、平均的な一般事務職よりは確かに10〜30%程度収入が多いようです。特にパートやアルバイトの場合はその傾向が顕著にあらわれています。
ただし、実務未経験者の場合は就職してすぐにその差が表れるわけではありません。それは待遇の面でもまったく同じです。実務経験のまったくない人が経理の仕事をはじめる場合、簿記の資格を持っていることはちょっとした名刺代わりに過ぎないのです。
従来はほとんど見られなかったことなのですが、最近は他の資格の多くに手当てが支給されていることに触発されてか、簿記検定に対しても「資格取得手当」を就職した当初から支給する企業がだんだん増えています。その金額は様々ですが、中には経理部門以外の職場でも支給している企業もあり、簿記に限らず社員が資格を取得することを歓迎する傾向が見られます。
経験を積めば飛躍的なランク・アップが可能
経理マンとしての真価が問われるようになって、収入や待遇について他の職種と大きな差が生じるようになるのは、実はある程度の経験を積んだ後の話なのです。すべての経理マンが大器晩成型の人生を選択しなければならないわけではありませんが、営業マンが「狩猟民族」の代表だとすれば、経理マンは「農耕民族」の首領といえるでしょう。この2つがうまく回転してはじめて会社経営が成り立つのであり、双方とも重要なポストであることは間違いありません。
経理マンの魅力はあくまでその安定にあります。ベテランになればなるほどその技能が重視されることから、転職も容易であり、仕事には困らないはずです。
その技能に磨きをかけてさまざまな仕事をこなせるようになれば、引っ張りだこになることは間違いありません。また、企業が大きくなればなるほど経理業務は重要となってきますので、大企業の経理担当者のヘッド・ハンティング(人材の引き抜き)も日常茶飯事に行われています。経験を積んで実力をつけていくことで、飛躍的なランク・アップが可能になるでしょう。
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